連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・114
どうぶつが生きる ひとが生きる
柳田 邦男
pp.1058-1059
発行日 2015年11月10日
Published Date 2015/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200329
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10年ほど前のこと,兵庫県の日本海側にある豊岡市に講演に出かけたとき,主催者が「せっかく豊岡に来たのだから」と,日本では一度絶滅したコウノトリを何とか再生させようとしていた飼育場に案内してくれた。
里山の裾野の,茂みや小川や田んぼ状の湿地などのかなり広い範囲を金網で囲んで,その中に10羽だったか20羽だったか,コウノトリがあちこちに点在するのを見ることができた。飼育係の人の話では,1971年に全国で豊岡にだけ生きていた1羽が死んだのを最後に,日本の空からコウノトリが消えてしまったという。その後,豊岡では人工飼育に取り組んだが,なかなかうまくいかなかった。しかし,1985年にロシアから譲り受けた6羽のコウノトリの繁殖に成功し,年々少しずつ生育数が増えていった。私が訪ねた2004年頃には,飼育場で育ったコウノトリを自然界に放す準備に入っていた。
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