連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・96
子どもが子ども時代を生きるとは
柳田 邦男
pp.498-499
発行日 2014年5月10日
Published Date 2014/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686103086
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夕暮れ時だった。東京・杉並区の市街地でのこと。家族と一緒に寿司屋に入ろうと,コインパーキングにクルマを駐めて,表通りに出た。片側一車線のあまり広くない通りだが,クルマは多い。私たちがその通りに出た時,ピーポー,ピーポーと警報音を鳴らしながら走ってきた救急車が,すぐ右手のところで停止し,ピーポーの音も止まった。後に続く数台のクルマも停まった。
左手の対向車線のクルマ数台も,次々に停止した。不思議な静寂が辺りをつつんだ。信号機のないところなのに何があったのだろうと思って路上を見ると,中央に一羽の小さなカモが,どうしていいかわからなくなったのか,立ちすくんでいた。ヒナほど小さくはないが,人間で言えば保育園児くらいの感じだ。「ママ,ママ,どこ?」と,母ガモを探しているに違いない。
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