連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・104
冬でも生きている小さないのち
柳田 邦男
pp.100-101
発行日 2015年1月10日
Published Date 2015/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200088
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私は栃木県の小さな町で生まれ育った。家は町はずれにあったので,庭から先はずっと田んぼが広がっていた。春はレンゲ畑や麦畑や里山で遊び,夏は昆虫採集や小川でのフナ獲りやドジョウ獲りをして遊んだ。冬は晴れると男体下ろしの季節風が冷たいが,それでも冬枯れの田んぼで遊んだり,竹馬を作ってあちこち行進したり,メンコをしたりして遊んだ。戦争や食糧難の時代だったが,貧しくても,子どもたちは自然の中で遊びを見つけて楽しい日々を過ごしていた。塾通いなどに追われなくてすむ時代だった。
小学校の高学年になると,蝶,トンボ,クワガタなどの標本を作った。6年生のころには,天文学が好きになって,毎晩,風呂から上がると,外に出て星座探しを楽しんだ。田舎だったので,空気は澄んでいたし,町にはギラギラしたイルミネーションの類いはなかったから,星々は満天に燦然と輝き,星座の1つひとつを確認するのは容易だった。視力が2.0あったので,すばる座(プレアデス星団)の星は7個まで見えた。中学時代には,気象学が好きになって,雲ばかり眺めていた。
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