連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・111
なにをすることがいちばんだいじか
柳田 邦男
pp.730-731
発行日 2015年8月10日
Published Date 2015/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200254
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“災害ユートピア”という言葉がある。1995年の阪神・淡路大震災のときも,2011年の東日本大震災のときも,家を失った何十万人という被災者たちが大きな公共スポーツセンターや学校の体育館などで長期にわたる避難生活を余儀なくされた。1家族あたりのスペースは狭く,プライバシーなどないかたちで寝起きする日々を過ごす。食事も粗末なものだ。
そんな中で,家族以外の避難者たちと食べ物を分け合ったり,ほかの家族の高齢者や幼い子どもを世話してあげたりなど,支え合う日常が生まれる。見ず知らずの人々が職業や身分や財産の有無に関係なく,同じ人間同士として連帯感を持って一日一日を乗り越えていく。そういう非日常の中で生まれた共同体を,いつ誰が名づけたのか,“災害ユートピア”と呼ぶようになった。
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