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はじめに─なぜリフレクションが重要なのか
私は,IPE(Interprofessional Education)の勉強のためにイギリスに留学したときに,リフレクションに出合いました。イギリスではリフレクションは,当たり前の概念になっているようでした。リフレクションの考え方は実は古くからあるもので,ナイチンゲールは「観察は私たちに事実を教えてくれる」と述べた後に,「そして,リフレクションはその事実の意味を教えてくれる。私たちは観察と同じくらい,たくさんリフレクションのトレーニングをしなければいけない」1)と言っています。1967年にHelen YuraとMary B. Walshが看護過程2)を出したときにも,原著のなかでは,リフレクションに触れています。
日本ではなぜ定着していないのかと疑問に思いますが,これは看護過程が日本で紹介されたとき,その翻訳書のなかにリフレクションという言葉がなかったことが原因かもしれません。看護過程のなかでリフレクションが少しでも紹介されていれば,看護基礎教育のなかで,看護技術として観察をトレーニングするように,リフレクションのトレーニングもされていたのではないかと思います。
リフレクションは,経験からの学びにより,看護師に求められる実践的思考能力,すなわち「その人とその人を取り巻く状況を的確に判断し,状況に応じた看護を実践できる能力」3)を育成します。看護の質を上げるために,学生や新人看護職員を対象にリフレクション研修を行なっている施設もあるのではないかと思いますが,リフレクションは,スタッフだけがするものではありません。専門職である看護師は誰でも,生涯学び続けていく必要があります。役割や職位を問わず,日々の実践を通して学ぶという強みをもったリフレクションの思考のスキルを,身につけてほしいと思います。看護管理者としての責務を果たす日々の管理実践のなかから学ぶということの重要性に気づくと,リフレクションへの関心がわくのではないでしょうか。
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