書評
『仏教看護の実際』
松下 博宣
1
1東京農工大学大学院技術経営研究科
pp.256
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102001
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
日本の看護における「和魂」を真摯に問いかける書
日本の看護界ではアメリカを中心に発祥・生成してきた理論,モデル,アプローチがこぞって紹介され,いわゆる近代科学としての看護学が全面に出てきている。しかしながら,このようなサイエンスとしての看護のみで完全に人を癒し,救済できるのだろうか。
否。患者は,せつなさ,やるせなさ,しんどさ,やりきれなさ,つらさ,不安,焦燥感,絶望,希望,苦しさ,スピリチュアルな痛みなどの内的な世界に,個別,特殊な意味を紡ぎつつ,生老病死という果てのない,小さいながらもかけがえのない物語を生きているからだ。さらには,退嬰化しつつも,実は日本社会の内側に未だ深く埋め込まれている文化,習慣,習俗,価値観,共同体性といった大きな物語を,普遍志向が強いサイエンスのみでは十全に包摂できないからだ。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.