Japanese
English
特集 睡眠研究—最近の進歩
仏教経典における夢と睡眠
Dream and Sleep in Buddhist Scriptures
藤吉 慈海
1
Jikai Fujiyoshi
1
1花園大学
1Hanazono Univ.
pp.561-566
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203103
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
仏教の経典の中には夢について書かれている例は多いが,夢とは夢みている状態すなわちパーリ語のsupinanta,梵語のsvapnaの意である。夢の中で見た対象は実際には存在しないから,唯識学派では,対象の非存在visaya-abhāvaの譬喩として夢が用いられる。「唯識無境」などと言って,外界の享受は実体的なものであり得ないから,夢にたとえられる。また「夢・幻・空華」などと言って,夢は幻や空華(眼病のために見える幻影の花)などの錯覚とともに,実体性のないもののたとえとして用いられる。また「夢幻泡影の如し」と言って,夢は幻や水泡や影法師のように実体性のない,はかないもののたとえとして用いられている。また「夢定」と言って夢の中で見たものが,精神の安定した禅定中に見たものと似ているので,夢と禅定とは対比的に用いられることもある。
要するに仏教では,夢(パーリ語spina,梵語svapna,チベット語rmi-lam)は睡眠中において心と心のはたらきが,その対境に応じて種々のことを見ることである。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.