連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・59
思い出の不思議な力―『かあさん どうして』『うみべのいちにち』『むぎわらぼうし』
柳田 邦男
pp.1026-1027
発行日 2010年10月10日
Published Date 2010/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101877
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懐かしいという感情を甦らせる風景や歌や物語や声などを,私は「心の故郷」と名付けている。誰でも,そういう「心の故郷」を記憶の深いところに持っている。そして,そういう「心の故郷」の何かが,ふと甦ってくると,心が何かしら潤いを取り戻すものだ。
絵本というものは,たとえ新しい作品であっても,そんな懐かしさをもたらしてくれるものだが,とりわけそこに示される情景や物語の内容によっては,忘却の彼方へ消えてしまっていたような幼少期の出来事や情景やその時の感情を突然リアリティをもって想起させてくれる不思議な力を持っている。
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