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はじめに
重症化・高度化していく医療体制のなかで,より安全で効率的な医療を多くの患者に提供できる医療環境を確保することが求められている。感染対策にかかわる診療報酬改定の意味するところは,今後の感染防止対策は,専門家チームを配置し迅速かつ適切な感染対策を充実させていくことをめざすべき時代になったことを示唆しているのではないかと考える。「Target Zero」という言葉が米国の院内感染対策の合い言葉になっているが,防ぎ得る院内感染をできるだけゼロに近づけること,そのための医療施設全体の努力が必要になっている。
当院では,2002(平成14)年に総合的な医療の質を向上させる組織横断的な組織としてTQM(Total Quality Management)部が設置された。感染管理部門以外には,安全管理,クリニカルパス推進,栄養管理,褥瘡管理,情報管理などの部門がある。このような組織横断的な部門がつくられ,感染管理専従の看護師が配置され,機動性のある感染対策ができるようになったことにより,感染対策は医療施設全体で取り組むものであることと,院内感染にかかわる情報を迅速に収集・分析し,活用していくことの重要性が医療スタッフ間に広く認識されつつある。
しかし,変化していく医療環境や医療スタッフの入れ替わりの多い環境下で,スタッフの誰でもが感染防止対策の確実な実践を行なうためには,抗菌薬の適正使用を含めたより専門性の高い介入をタイムリーに行なうことのできる組織風土と体制を常に維持することが重要である。そのための推進役となる専門スタッフの育成は不可欠である。そのような背景において,今回の感染防止対策加算はよい追い風になっている。
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