扉
"First Do Not Harm"
松岡 成明
1
1産業医科大学脳神経外科
pp.1225-1226
発行日 1988年10月10日
Published Date 1988/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202705
- 有料閲覧
- 文献概要
20数年前外国留学中に日本に帰ってこれだけは実行しようと決めたことが2つある.その一つは,M大学のJ教授の下にいた時,全員クリスマスパーティに招待されて,皆1年間良く頑張ってくれて有難うと,プレゼントに1冊の本を各人に渡された.それはその年のベストセラーの1冊であった.師の暖かい心遣いに感謝したことである.日頃は厳しく,叱られどうしであったわたしは,多くの若い脳外科医を預かる現在,常に感謝の気持ちを忘れてはならないと思っている.その後クリスマスが近づくと,今年は何が送ってくるかと楽しみであった.First do not harm-Reflec—tions on becoming a brain surgeon—という32歳の脳外科医Dr.Rainerの書いた本が昨年の暮れに届いた.このタイトルをみて,昔から,歩いて入院した患者は術後も歩いて帰るような手術をしなければと厳しく教えられてきたので,このタイトルは脳外科医にとってはぴったりと思い,読んでいく中にこの言葉は一度も文中に見られず,読み終って,やはり脳外科医は"First do not harm"を心掛けねばとつくづく思わせた面白い本であった.その中で上司との対話のひとこまを紹介したい.ある時,救急外来に自動車事故による多発性外傷後の昏睡状態で搬入された患者のレ線像で,左側頭骨の粉砕骨折とCTでその直下に脳内血腫と,反対側への変位が著明であった.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.