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はじめに
看護実践の場において,患者が見える,看護が見える看護記録のあり方は長年の課題であり,いまだに患者の全体像を即座に把握できる記録に出合えていない感がある。しかし,医療・看護を取り巻く環境は急激に変化し,1997(平成9)年の医療法改正において,患者に適切な診療情報を提示し,患者の理解を得るよう努力する義務が明記された。当然,診療録のなかに看護記録は含まれており,情報提供に応じられる記録が求められることになった。したがって看護記録は,患者の全体像の把握(社会的・身体的・精神的),看護実践と成果など,評価や医療職間の情報共有のための資料,あるいは継続した医療・看護サービスの提供に寄与するものから,患者自身が受けている医療・看護を知るためのものへと,その意義は拡大したことになる。さらに2008(平成20)年度の改定では,看護必要度を測定する基準が導入され,それに伴う看護記録が求められるようになった。
看護職はこれまで長年,記録の方法にこだわり試行錯誤してきたが,これらの医療・社会環境の変化に対応する真の看護記録の意義を明確にし,ケアの評価・質の向上に活用できるもの,医療職ばかりでなく誰が見てもわかりやすい効果的な記録に取り組む必要があろう。
これまでの看護記録が歩み続けた,研究的視点を含めた歴史的背景を鑑みれば,その問題点と今後の方向性を述べることは容易ではなく,多くのご意見があろうことは推測できるが,ここで与えられたテーマは「医療・看護の質を担保し,診療報酬に活かす看護記録」である。河北総合病院(以下,当院)が診療報酬に活かす記録とともに,私たち看護職の原点である「日常の看護に活かす記録」,そして患者とともにある看護記録をめざして取り組んでいる方法を紹介しながら,現場から発信する看護記録のあり方に関して述べたいと思う。
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