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はじめに
病院情報システム(Hospital Information System;HIS)はなくてはならないツールになってきており,情報システムが構築されているかどうかが,診療報酬の支払いにも影響するようになった。看護職にとっても情報システムは重要な存在であり,そこから得られるデータを集積して,改善活動を行なっていくことが期待されている。
看護必要度の開発に10年の年月を費やし,看護必要度の導入とその活用を精力的に推進されてきた筒井孝子氏は,『看護必要度の成り立ちとその活用』のなかで「定額給付制への大きな流れとIT化」1)について述べ,看護職とITの活用について喫緊の課題としている。診療報酬を得ていくためのツールとしてITが欠かせないことや,看護におけるITの普及の必要性についても説いており,看護管理者にとって,ITの活用がいかに重要であるかを力説している。
すでにアメリカで導入されている,医療の質の評価に基づく診療報酬の支払い方式(Pay for Performance;P4P)では,ITの活用は必然であり,「情報システムの質」が問われている。このように,医療経営や看護管理にはITが不可欠なのである。このようななか,2008(平成20)年10月1日付の「New York Times」によれば,米国政府の管轄する保険Medicareは,「避けられる可能性のある過誤」に対する「支払いを行なわないと決定した」としている。
その「避けられる可能性のある過誤」とは,①転倒・転落,②心臓手術後の縦隔炎,③カテーテルの不適切な使用による尿路感染,④重篤な褥瘡,⑤カテーテルの不適切な使用による血管炎,⑥手術時の異物残留,⑦空気塞栓,⑧不適合輸血,が挙げられており,上記のような「避けられる可能性のある過誤」によって治療に要した費用は支払われない。つまり,「評価に基づく支払い(P4P)」が行なわれるということなのである。
この8つの項目は,看護の領域にも深く関与しているため,日本のことではないので関係がないとは言っていられない。
本稿では上記のような項目に対する安全管理を行なうために,杏林大学医学部付属病院(以下,当院)では,どのようにシステムを構築し,活用しているかを紹介したい。
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