連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・44
過ぎし日が甦る夜行列車の情景―『やこうれっしゃ』『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』
柳田 邦男
pp.298-299
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101452
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東京から九州・熊本に向かう深夜特急「はやぶさ」がなくなるという。私には一抹の寂しさの漂う感慨がある。
あれはかれこれ半世紀近く前の1960(昭和35)年5月のこと。大学を卒業してNHKの記者として入局した私は,40日間の研修を受けた後,広島中央放送局に赴任を命じられた。北関東の田舎町に生まれ育ったので,関西地方はもとより,瀬戸内地方は,私にとってまるで未知の世界だった。家族や若者が海外旅行に出かける今時と違って,アルバイトに明け暮れていた貧乏学生が旅行することなどない時代だった。
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