らいを超えて・5
お召し列車
前浜 政子
1
1長島愛生園
pp.524-527
発行日 1979年5月1日
Published Date 1979/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918678
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お召し列車
暗い田舎の夜道を,兄貴の自転車の荷台に乗って桑名の駅まで4里.島行きの病者が20人ほど既に‘お召し列車’に乗っていた.その中には叺(かます)をがぶって来た人もいたらしい.しくしく泣いている若者もいたが,僕はおふくろの一喝以来,涙が止まって腹が決まっていたから泣かなかった.1車輛借りきりの客車の中はカーテンを張って,入口に板をぶちつけて,外から見えないようにしてある.それこそお召し列車ですねエ.
このお召し列車に愛生園の石原医官と佐藤看護婦さんが乗っておられて,いろいろ島の話を聞かせてもらった.作業のあること,治療のこと,生活のこと,すっかり安心して,ゴットンゴットンお召し列車の旅を続けて,昭和23年3月28日,長島愛生園に収容された.その収容記念日をやろうやと言われるが‘わしゃあいやや’言うて断わっている.
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