連載 今に生きるあのヒトコト・6
“迷ったら現象に戻れ”
東 めぐみ
1
1駿河台日本大学病院
pp.483
発行日 2008年6月10日
Published Date 2008/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101221
- 販売していません
- 文献概要
看護管理に関する経験のなかで思い出す一場面があります。内科病棟で主任看護師のとき,高齢者のAさんの状態が回復し,そろそろ退院だね,ということになりました。ちょうど状態が悪化している患者さんがいたので,Aさんはナースステーションの側の病室から少し離れた病室に移っていただきました。これで夜勤さんも重症者の観察がしやすくなったね,と帰宅したのですが,翌朝出勤すると驚くことが起こっていました。Aさんが窓から落ちたのです。内科病棟は3階にあり,幸い窓の下には緊急入口のひさしがあったために,Aさんは怪我もなくすみましたが,今思い出しても恐ろしくなります。Aさんは窓をトイレのドアと間違えたのでした。私は自分の判断の甘さに落ち込みました。高齢であるAさんの環境を変えることがどういうことかをきちんとアセスメントし,対策を取っていなかったからです。
この経験が一つの発端になり,管理者として,看護師としてもっと学ぶことがあると実感しました。私は看護を続けていくために,単に経験だけではなく,今,現場で起きている事柄を理論的に根拠づけて見ることができる力がほしいと思い,教員養成課程1年,大学院修士課程へと進みました。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.