連載 カウンセリングの現場から・7
殴られても戻っていく人たち
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.592-593
発行日 2000年7月10日
Published Date 2000/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901245
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A子さんは美しい人だった。整った顔立ちは少し冷たすぎるぐらいの印象を与える。地味な服装でも必ず目立ってしまう,そんな雰囲気を漂わせていた。
「夫の暴力」。これが彼女の主訴だった。我々の仕事は先入観をもたないことを旨とするのだが,やはり「らしさ」にとらわれてしまう。たとえば,夫のアルコール依存症で来談する人はどこか疲れ果てているものだし,親との関係を何とかしたいと考えている人は明るい表情をしてはいない。だから,7年前,A子さんが相談に来た時も,私は髪を振り乱した化粧気のない女性を想像していたのだ。
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