連載 エッセイ――私が見つけた世界の「食」・3
BAKSO[スマトラのラーメン]
内木 美恵
1
1大森赤十字病院
pp.332
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101186
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ここインドネシア・アチェ州ムラボ(スマトラ島)のホテルにはレストランがない。その代わり屋台や食堂がたくさんある。2004(平成16)年,スマトラ島を襲った津波以来,多くのNGO職員が集まるようになった。それ以前は反政府軍と政府軍の対立が20年来続いており,戒厳令が敷かれるような戦闘地であった。そのため外国人は当然のことながら,インドネシア人ですら入れる地域ではなかった。その戦闘のさなかの2004年12月26日,スマトラ沖地震・津波災害が起きたのである。津波の後,停戦条約は結ばれ,銃声が聞こえることはなくなった。
いま,インドネシア人や外国のNGOが津波被害の復旧と開発協力のために働いている。そのせいかどうかわからないが,津波直後に救援に来たときよりレストランのメニューがいずれも値上がりしている。あれから2年経ち,ひどいところでは2倍である。しかし,ホテルの近くにある行きつけのラーメン屋は変わらず6000Rp(ルピー:日本円で80円程度)である。このラーメンはMI-BAKSO(ミーバソ)とインドネシアでは呼ばれる。しかし,この地域ではBAKSO(バソ)と呼ぶ。なんだか日本のそばを逆から読んでいるようで覚えやすい。
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