特別記事
安全文化の拡がり,鉄道から病院へ―JR東海・名古屋セントラル病院の取り組み・1
伊藤 彰彦
1
1東海旅客鉄道株式会社(JR東海)人事部
pp.112-116
発行日 2008年2月10日
Published Date 2008/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101132
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
鉄道には,数多くの事故を教訓にしてさまざまな対策を実施し,安全度・保安度を向上させてきた歴史があります。3年前に107名もの死亡者を出したJR西日本の福知山線列車脱線という痛ましい重大事故はありましたが,それでもわが国の鉄道の安全度・保安度は世界でも極めて高い水準にあることは間違いありません。私の所属するJR東海でいえば,東海道新幹線は開業40年を越えてもなお,営業列車の脱線・衝突事故はゼロ,平均遅延時分も1分以内を続けています。
私はかつて銀行員として,製造業を中心とするさまざまな企業の安全に対する取り組みを垣間見てきました。JR東海に入社後,静岡支社で人の力に大きく依存する在来線という分野に携わり,JR東海のいわゆる「安全文化」に触れ,教えられ,考えさせられました。
その後,一昨年7月に新築移転した名古屋セントラル病院(以下,当院)をJR東海人事部で担当することになり,医療安全について,当院の安全管理者であった大原まゆみ副総看護長とさまざまなテーマで議論を重ねたことが,本稿のきっかけになりました。鉄道の素人が,JR東海において事あるごとに素直にすばらしいと感じた「安全文化」の実践例を中心に紹介していきます。医療の現場での安全文化の醸成,実践の参考としていただければと思います。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.