連載 読み解き能力で看護現場を変える・5
取り扱い説明書を読み解き,書き換えて使う
奥泉 香
1
,
前田 久美子
2
,
舛森 とも子
3
,
高橋 高美
4
,
大木 正枝
5
,
東條 小夜子
2
,
橘田 久子
2
1杉野服飾大学
2大森赤十字病院
3葛飾赤十字産院
4武蔵野赤十字病院
5成田赤十字病院
pp.908-915
発行日 2003年11月10日
Published Date 2003/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100938
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はじめに
病院には,日々新たな医療機器が導入される。そこで,今回は,医療機器メーカーが発信する機器の取り扱い説明書を検討する。つまり,メーカーの発信する取り扱い説明書を,情報を媒介するメディアの一種ととらえ,その読み解きと,読みとった情報に基づいたスタッフへの発信・伝達について考えてみる。
取り扱い説明書を作成する際のポイントや注意点については,昨今かなり語られるようになってきている。先駆的な著作物としては,『ユーザ・読み手の心をつかむマニュアルの書き方』1)『理解の秘密』2)『ヒューマン・エラー』3) 等を挙げることができよう。われわれは,これらから説明書や指示書を作成する際の有効な,そして示唆に富むポイントを学ぶことができる。
しかし,こういった発信者側への改善を促す有効な研究に比べて,読み手側のリテラシー(読み解き・発信能力)に焦点を当てた取り扱い説明書に関する研究はまだまだ少ない。医療現場では,メーカーが発信した取り扱い説明書を,実際の使用状況に即して読み解き,スタッフ間で正確な統一見解を形成することが要求される。そこでは,製造者の観点から記述された情報を,使用者の観点で書き換えることも求められる。
以上のことから,本稿では筆者らの病院で半年近くにわたり,実際にトラブルが発生した事例を取り上げ,そこで必要とされた看護職のリテラシーを,具体的に検討してみる。
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