新連載 エイズと共に生きる人々と看護職者たち in タイ[1]
村での生活と仕事
近藤 麻理
1
1兵庫県立大学看護学研究科博士後期課程
pp.763-768
発行日 2004年9月10日
Published Date 2004/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100749
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連載のはじめに
この連載では,筆者が1987年から旅をしたり,長期滞在したタイで関わってきたエイズと共に生きる人々と,看護職者たちの姿を描いていきたいと思っています。それは,エイズと共に生きる人々を「かわいそうな人たち」あるいは「患者」という特別な存在としてくくってしまうと,彼らの「今,生きている姿」が見え難くなると思ったからです。特殊な状況に置かれている人々の姿だけを書いてしまうと,その人たちだけが抱えている特別な問題であるという誤解が生じるかもしれません。エイズと共に生きているのは,決して感染者自身だけではなく,そこで暮らすすべての人々もまたエイズと共に生きているのです。広い意味でとらえるならば,この世界で生きている私たちもすべて,エイズと共に生きているといえるでしょう。
地方の村々においては農業従事者が多く,一定の収入を得る仕事が少ないため,経済的に困窮している家庭ではさまざまな問題を抱えています。しかし,このような状況下でも村の人々は地域社会のなかで助け合いながら生き,生活の隅々にまで入り込んだタイ仏教が,生活の規範や価値観に大きな影響を及ぼしていることがわかるのです。そしてこの地域社会のなかで,私たちと同じ看護職者たちも日々の生活を送りながら看護を実践しているのでした。
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