連載 法と医療のはざまで[5]
医師法21条による「異状死の届出」
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.432-433
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100739
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平成11年2月に発生した都立広尾病院事件――看護師が,ヘパリン生食水(ヘパ生)と消毒液ヒビテングルコネート(ヒビグル)を取り違えて注射し,患者を死亡させた事件は,まだ記憶に新しいと思われる。この事件の事後処理をめぐって,病院長が24時間以内に所轄警察署に異状死の届出をしなかったとして,医師法21条違反で起訴(ほかに,死亡診断書等の死因を病死および自然死とし,病名を急性肺血栓塞栓症などと記載した虚偽有印公文書作成罪等も含まれている)されたが,一,二審ともに有罪判決(懲役1年,3年間執行猶予,罰金2万円)を受けて,現在上告中である。
医師法21条によれば,「医師は,死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」とされており,診療中の患者が死亡した場合でも,死体を検案して異状があるときは届出義務がある。判決によると,検案した主治医は,看護師から誤投薬の報告を受けていたが,事故の翌日,病院長が招集した病院幹部による対策会議において,警察への届出について検討していることを知って,看護婦の絡んだ医療過誤であることから,個人的に届け出ようとは思わず,病院としての対処に委ねていた。一方,病院長は,対策会議において,いったんは警察への届出を決定したが,東京都病院事業部職員の意見を聞いて警察への届出はしないことにし,主治医らと共謀して24時間以内に届出をしなかったと認定している。なお,主治医は,同条違反で罰金2万円の略式命令を受けた(当時の罰則は罰金2万円以下であり,その後,罰金50万円以下に引き上げられた)。
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