ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・4
「異状死の届出」と「死因の種類」の関係
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.834-838
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204367
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Case
患者:82歳、男性。息子と2人暮らし。
既往歴:認知症、脳梗塞、高血圧
病歴:5年前に脳梗塞を発症したあと、軽度の認知症を認めていたが、身の回りのことはできていた。1年ほど前から肺炎を繰り返すようになり、当院内科にたびたび通院および入院をしていた。嚥下造影検査にて誤嚥を認め、嚥下障害・誤嚥性肺炎と診断。入院中は、抗菌薬治療のあと、嚥下食などを用い、口腔ケアに努めることで、再発を予防できていた。しかし自宅でのケアが難しく、退院後1カ月程度で肺炎を再発。主治医が施設入所や胃ろう造設を提案するも、いずれも希望されず自宅療養を続けていた。
第1病日、発熱を主訴に受診され、誤嚥性肺炎と診断するも、同行の息子が入院に拒否的で、経口抗菌薬を処方して帰宅。第10病日、自宅のベッド上で心肺停止で発見され、当院に救急搬送。救急救命処置を行うも蘇生せず、死亡確認となった。四肢に軽度の皮下出血を認めたが、致命的な損傷を認めなかった。息子は「長らくお世話になりました」と当院および主治医に感謝を述べ、トラブルになる様子もなかったが、担当した救急医が「自宅で死亡した事例なので、警察に届け出る必要がある。死亡診断書は書くべきではない」と主張。息子と主治医は納得していなかったが、病院から警察に届出を行い、ご遺体は警察に引き取られた。
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