連載 病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・10
院内でも医師法21条の異状死として警察へ通報すべきでしょうか?
越後 純子
1
1国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 医療の質・安全部 医療安全対策室
pp.167-169
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211368
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Case
手術が予定されていた患者に,術前抗菌薬の点滴が終了し,ヘパリンで輸液ルートのロックを行いました.その直後に胸苦しさを訴えたため,医師の指示で維持輸液を開始しましたが,その際も同じ輸液ルートが用いられました.その直後に急激な血圧上昇を来し,間もなく心停止に至り,蘇生措置が施されましたが,心拍は再開せず,間もなく死亡が確認されました.
その後,患者の病理解剖が行われましたが,その際,体表を確認したところ,右前腕の点滴針の穿刺部位から,静脈の走行に沿って暗褐色の索状皮膚反応が見られました.解剖の結果,多数の血栓が肺に認められ,死因は肺塞栓であることが分かりました.
また,患者の死後に確認したところ,スタッフステーションに「ヘパ生」とマジックで書かれ,10ccの透明な液体が入ったシリンジおよび消毒薬を吸い上げた同じ大きさの空シリンジが発見されました.これらの状況を合わせると,消毒薬を誤って注入し,その結果,多数の血栓が形成され,肺塞栓に至ってしまったと推察されました.
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