母子衛生統計
妊娠の届出
中原 俊隆
1
1厚生省児童家庭局母子衛生課
pp.325
発行日 1977年5月25日
Published Date 1977/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205213
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母子保健法第15条には,妊娠したものはすみやかに妊娠の届出をするようにすべきことが規定されている。これは,妊婦を行政的に把握し,妊婦から産婦,乳幼児へと流れる母子保健対策を実施する出発点として重要なものである。
妊娠した者は,すみやかに,保健所を設置する市においては保健所長を経て市長に,その他の市町村においては市町村長に妊娠の届出をすることとなっている。また,保健所を設置していない市町村長は,都道府県の設置する保健所長を経由して,都道府県知事に必要な事項を報告することになっており,いずれにしても,市町村および保健所に情報が集まり,各種の母子保健事業,たとえば健康診査,保健指導,訪問指導などが行われることとなる。なお,この届出は,妊婦の義務規定とはされていない。保健指導などの保健福祉の措置との関連において届出を励行させ,妊婦を早期に行政的に把握することは望ましいことではあっても,妊娠したという事実は,あくまでも個人ないし妊婦とその相手方との問題であって,第3者の介入すべき事柄ではない。このことは,妊娠した者に対し,保健サービスを提供する立場にある行政機関についても同様である。したがって,届出を妊婦の義務とはせず,あくまで妊娠の届出制の本旨についての正しい理解のもとに,妊娠した者,本人の自発的意志に基づく届出に期待しようとしているのである。
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