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はじめに
近年,医学およびその周辺の科学技術の進歩に伴う高度医療の普及と,人々の権利意識の高まりに伴って,医療の場における倫理的課題への対応が重視されるようになってきている。
特に,高度医療を提供する役割を担う大学病院,特に看護部にとって,その課題への対応は必須事項になっている。その一方で,看護部のスタッフはこれまで看護基礎教育レベルで看護倫理教育を十分に受けてこなかったことに加え,臨床における倫理的課題は複雑で,一見しただけでは識別困難で複雑な様相を呈していることから,臨床現場での倫理的課題への対応に不全感をもっている。
このような状況で,筆者らは大分大学医学部附属病院看護部において,看護師を対象にした院内継続教育の一環として「看護職員院内研修:看護と倫理」の研修を続けて7回目を迎えた。研修のはじめの3年間は2時間程度の講演会形式であった。最近3年間は2日間連続の研修として,筆者の1人である佐藤(学外者)が講師として研修会当日のリーダーシップをとり,看護部の教育委員がファシリテータ役を務めて実施している。参加は,個人の自発的参加とし,週末の2日間を休暇を使って出席する。
倫理研修を始めた当初は,「看護倫理」への戸惑いがあったが,昨年ごろから,病棟でのカンファレンスや他の院内研修会などで,倫理的問題が主題になることが増え,日常的に倫理的問題への感受性が求められるようになってきたことを自覚し,自分も研修を受ける必要性を感じたという参加動機が増えてきている。
今回,この研修が,ある程度の成果を上げていることが確かめられたので,その一部を報告する。
なお,研修結果の公表に関する倫理的配慮として,受講者には,今回の研修会の結果を実践報告として公表することについて説明し書面によって協力の同意を得た。その際に,研修結果の公表は看護部の意向であること,研修とその効果についての調査は区別されること,調査への協力の諾否は勤務上の不利益にはならないことを説明した。具体的には,調査への同意書および個々の研修効果についての調査結果は講師のみが管理し,希望者には研修効果の判定結果を個別に報告するが,それには看護部は関与しないことを説明した。
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