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はじめに
2002年,厚生労働省は,「新たな看護のあり方に関する検討会」中間まとめを受けて,医政局長通知を出した。厚生労働省医政局長通知(平成14年9月30日付け医政発第0930002号;以下「本通知」)である。
本通知は,「医師又は歯科医師の指示の下に保健師,助産師,看護師及び准看護師が行う静脈注射は,保健師助産師看護師法第5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする」としている。これによって,1951(昭和26)年に出された厚生省医務局長通知(昭和26年9月15日付医収第517号;以下「昭和26年厚生省通知」)が,「静脈注射は,薬剤の血管注入による身体に及ぼす影響の甚大なること及び技術的に困難であること等の理由により(略)法第5条に規定する看護婦の業務の範囲を超えるものであると解する。従って静脈注射は法第37条の適用の範囲外の事項である」とするこれまでの行政解釈は変更された。
従来,静脈注射はこの昭和26年厚生省通知によって,医師の指示があっても看護師が行なえない医行為であって,それを保健師,助産師,看護師および准看護師(以下「看護師等」)が行なうことは,医師法に抵触する,とされてきた。しかし,前述の中間まとめで触れられているように,実際は,90~94%の病院の医師が看護師等に静脈注射を指示したり,看護師等が日常業務として静脈注射を実施しており,さらには60%の訪問看護ステーションで看護職等が静脈注射を実施している。このような現実と従来の行政解釈とのギャップを埋める必要性に迫られたことも本通知の背景にあろう。
では,本通知にはどのような意義があるのだろうか。日本看護協会は,質の高い効率的なサービス提供を目指す医療提供体制の見直しのなかにあって,看護職の能力を最大限活用する検討は必要であり,看護師による静脈注射の実施もその一環と考える1),としている。これは,看護師等が静脈注射を実施できるようになったことを,肯定的に捉えているといえよう。
しかし,筆者は,本通知が,医師の指示を得て看護師等が行なう静脈注射を「法第5条に規定する診療の補助行為の範疇」として取り扱うものとしたことに懸念を抱いたので,その点を中心に考えてみたいと思う。
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