連載 法と医療のはざまで[2]
子の治療を拒否する親の親権停止
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.156-157
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100441
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最近,親が子を虐待する事件が増加していることは周知の通りだが,殺人,傷害致死などの刑事事件として起訴される事例も少なくない。一方,「ネグレクト」とよばれる不作為の虐待(例えば,乳児の保育をしないとか,食事を与えないなど)について,刑事責任を問われた例は多くはないが,最近では,母親が夫の出張中に男と会うため生後4か月の寝返りもできない乳児をうつぶせに寝かせたまま外出し,約38時間にわたり放置して鼻腔閉塞により窒息死させ,保護責任者遺棄致死罪で懲役3年の実刑判決を受けた例がある。また,母親が1歳8か月の幼児に対して,2か月以上にわたり生育に必要な飲食物を与えず,栄養失調による全身衰弱により死亡させ,さらに,もう一人の子を殴打殺害して保険金を騙し取った事件と併せて懲役15年の実刑判決を受けた例などがある。
さらに,新聞報道によると,先天性の心臓病の男児の手術に同意しない両親に対して,児童相談所長が親権の乱用に当たるとして,平成12年6月,家庭裁判所に親権喪失の宣告と審判までの親権停止の保全処分を請求して認められ,親権代行者に選任された親族の同意を得て手術が行なわれたとのことである(平成15年8月10日付日経新聞朝刊)。
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