連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・11
親による定期接種のワクチン拒否
福原 里恵
1
Rie FUKUHARA
1
1県立広島病院新生児科
キーワード:
ワクチン躊躇
,
VPD
,
代理意思決定
Keyword:
ワクチン躊躇
,
VPD
,
代理意思決定
pp.701-704
発行日 2025年5月24日
Published Date 2025/5/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293080701
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Case 定期接種のワクチンも絶対に受けさせたくないという親のケース
6カ月男児.生後3カ月時にRSウイルス気管支炎で近所のクリニックを受診した.その後より感冒時には喘鳴を認めるようになり,抗アレルギー薬を定期的に内服することになった.初診時より定期接種のワクチンを受けていないことが確認され,来院の都度ワクチン接種の必要性を説明し促したが,母親自身のワクチン接種履歴を理由に絶対に受けたくないと言っている.なお,その他の養育状況には問題がなく,喘息等の疾患で定期受診している.
患児の母親(23歳)は,乳児期に3種混合ワクチン接種の都度発熱し,接種部位上腕が腫れたことから,以後のワクチンを接種しないまま成人している.小学校の時に風疹に罹患したが,症状も軽く,妊娠前の風疹抗体価も十分であった.「ワクチン接種は副反応で体調を崩す可能性があるため怖いものである」と患児の祖母より繰り返し聞いたことで,有害事象への恐怖があり,母親自身,ワクチンを受けていなくても特に健康上の問題もなく,自然に罹患したほうが免疫を獲得しやすいと思っており,受ける必要性も感じていない.新生児マススクリーニングや聴覚スクリーニング,ビタミンK2シロップ13回法は実施していた.

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