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はじめに
わが国における看護職員の不足数は4万1600人であり(2006年現在),2010(平成22)年には需要見通しと供給見通しの差が縮まるものの,依然として看護師不足の状況は続き,この不足数は1万5900人と推定されている1)。2005(平成17)年度の看護職員離職率は12.1%であり,前年度よりも0.5%上昇している。また新人看護職員が1年以内に離職している割合は9.3%に及び,看護師不足への対応が急務となっている1)。
米国では,看護師不足に陥っていた1980年代に,看護職員を引き付け,雇用維持を成功している病院(マグネットホスピタル)の特性を解明する調査が実施された2,3)。そのマグネットホスピタルの特性として,「適切な看護人員配置」「参加型・支援型の管理方式」「柔軟な勤務スケジュール」「看護職員の専門職としての自律性や責任感を重んじる」「看護職員のキャリア開発や継続教育を支援」などが挙げられている4)。
米国では,このような病院特性から開発されたNWI(61項目)を活用し,1)現在の労働状況,2)仕事満足度にとっての重要な因子,3)ケアの質にとっての重要な因子の評価を行なってきた5)。また,NWIの65項目から職務満足度に関連した項目を削除し,1項目に修正を加え,さらにチームナーシングに関する新しい1項目を加えたNWI-R(57項目)も開発され,組織の「看護の専門性を発揮できる職場環境」の評価に活用されている6)。この評価は,看護師の仕事満足度を高める環境整備につながり,離職防止にも貢献している。
わが国においては,このような「看護の専門性を発揮できる職場環境」を包括的に評価することのできる信頼性・妥当性をもった測定用具はほとんど開発されていない。本研究の目的は,わが国における「看護の専門性を発揮できる職場環境」の構築に向けた組織特性を検討するために,日本の医療・文化事情に合わせたわが国でも使用可能な日本語版NWI-Rを開発することである。また日本語版NWI-Rから,日本の看護師が認識している「看護の専門性を発揮できる職場環境」の因子構造を明らかにし,下位尺度を作成することである。
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