焦点 看護の質向上のために今,電子カルテの意義を問い直す
看護の質向上のために電子カルテをどう使えばよいのか―メーカー勤務の経験から考えること
藤田 比左子
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1広島大学大学院保健学研究科看護開発科学講座・基礎看護開発学研究室
pp.636-640
発行日 2006年8月10日
Published Date 2006/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100337
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メーカー勤務で培われた経験
1999(平成11)年4月22日,厚生省(当時)健康政策局長・医薬安全局長・保険局長通知により,診療録等の電子媒体による保存が認められてから7年が経過した。1999年といえば,電子カルテの提供とサポート事業を行なっていたある企業に私が勤務していた頃である。私はそれ以前に,看護師として臨床経験をもっており,その企業にも看護師資格をもつ社員として採用された。
それまでその企業には医療従事者は所属していなかった。そのため営業マンやSEが,電子カルテの内容について直接,顧客である医療従事者と折衝していたという。しかし当然のことながら,医療従事者と営業マンでは,医療用語を使ってスムーズな対話をすることは困難である。例えば,ある医師から「これって血ガスのデータは入るの?」と聞かれ,営業マンが「け・つ・が・す(尻ガス)?」と,音韻のみでさまざまな想像をめぐらしてしまったという笑い話もあるくらいだ。こういう状況であるので,顧客に説明を求めなければならない部分が大きく,電子カルテの納期までに大変な時間を要することが多かった。そのため直接顧客と対話をし,顧客の要望を的確に把握するには医療従事者であることが望ましいと,私が採用されるに至ったという経緯がある。
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