焦点 看護研究と倫理
小児とその家族を対象とする看護研究における倫理的配慮
内田 雅代
1
1長野県看護大学
pp.131-137
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900603
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はじめに
1983年に調査した「小児看護領域で看護婦が直面した倫理上のジレンマ」(兼松他,1992)の研究においては,家族と医師により子どもの医療方針が決定されており,看護婦は子どもの世話に全面的に関わりながら,生命を守れないことに思い悩んでいたものの,決定に参加していなかった。そしてこのような状況に関して,看護婦自身の意見を述べる等の行為はみられていなかった。その後,十数年経過し医療環境は変化したが,骨髄移植のケアに関する看護婦の認識に関する調査(内田,1997)の中で,医師や家族が行なった移植の決定を「子どもにとって本当にこれでいいのか」と看護婦が悩み葛藤した場面においても,看護婦は子どもや家族の気持ちを確認する等の行為を実践していなかった。看護婦が倫理的な問題にどう関わっていくかを自ら問うことが求められており,そのためにも倫理的な教育が不可欠である。
道徳性は,知識・判断,心情または情操,そして行為の3つの側面にわけて考えられる。近年,看護倫理の主要な概念として,「ケアの倫理」の重要性が強調されてきており(Fry,1998),また,文化に応じた倫理基準の必要性が説かれている(Davis,1998;2000)。看護学生への教育においては,倫理的判断や感受性に関する教育とともに,実践につなげられるための教育が必要である。
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