焦点 ヒューマンセンサー(感性)に関する看護研究
綜説
看護学における味覚の研究
蓑原 美奈恵
1
1愛知医科大学公衆衛生学教室
pp.409-420
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900152
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はじめに
食物を摂取するときに人が得る満足感は,その食品が与える味覚の他に,におい(臭覚),歯ごたえ(触覚),温度(温冷覚),スパイス(痛覚),見た目のおいしさ(視覚),咀噛音(聴覚),食欲など,あらゆる感覚に影響される。また,心理的な影響も大きく,食事環境も重要な役割を果たしている。これらの感覚は,生活習慣や生活環境,過去の経験,教育歴などによって変化する。しかし,基本的に味覚は,生物体としての自己保存本能に基づき栄養学的に身体が要求するものをおいしく感じるようになっていると思われる。さらに,甘味と塩味は身体の要求度によって,酸味と苦味は経験の差によって変化する。
看護学領域における食物とのかかわりは,幅広く疾病の発生要因として予防医学の手段,さらには栄養学的見地から疾病の治療や悪化防止などを目指したものでなければならない。しかし,看護婦は食事環境を整えたり温度の調節,スパイスの活用,塩分や糖分など食品の制限,食事摂取行動など,環境要因の設定のみを問題にしている現状にある。食事こ関する看護介人は患者の病態を考慮に入れるだけではなく,患者の宿主要因である味覚のレベルを把握した上で行なうことが,目的達成に,より近づくことになるのではないかと考える。
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