特集 症状からみた検査のすすめ方
味覚—電気味覚検査
吉野 幸雄
pp.691-694
発行日 1974年10月20日
Published Date 1974/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208125
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I.はじめに
味覚異常を訴える患者があつても,聴覚,視覚の異常に比べて,日常生活に,さほど不便を感じないことから,味覚異常に対して興味が薄く,検査法の進歩もほとんど見られなかつた。そして,最近まで,味覚検査と言えば,蔗糖,食塩,酢酸,および塩酸キニーネの4種類の溶液を希釈して定量的検査を行なうか,定性的検査を行なうかであつた。そのようななかで,Krarup(1958)1)が導入した電気味覚検査法が,近年注目されるようになつている。両者の検査法を比較してみると,溶液による場合は,常用の味でもあり,感覚として自然に感じられる利点があるが,欠点として広い範囲に適用しなければならず,一側が患部である時,健側に溶液が広がつて味を感じていることがある。また,味が後に残ることから,定量検査は容易でない。このようなことから軽度の味覚障害を発見することも困難である。
Krarupによる電気味覚検査では,溶液による場合と反対に,狭い範囲に適用でき,定量検査が容易で,軽度障害の発見も可能であるが,欠点は金属の味ということで,一見,理解し難い味であり,味として感じない人さえいる。それにもかかわらず,この方法は,脳神経障害の検査として,特に聴神経腫瘍の早期診断に不可欠な検査法となつていることから,誰にでも作れる,廉価な器械で,種々の症例を検討してみたいと思う。
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