原著論文
看護面接の機能に関する研究—透析患者との面接過程の現象学的分析(その1)
広瀬 寛子
1
1東京大学医学部健康科学看護学科
pp.367-384
発行日 1992年8月15日
Published Date 1992/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900092
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序 章
第1節 本研究の背景
1) 看護の現状と看護の本質
医学及び医療の進歩により,治癒の見込みのなかった疾患が次々と克服され,患者の社会復帰が可能となってきた。その中で,患者の存在から切り離された臓器中心の治療の危険性など,患者の人間性を疎外する傾向も生まれてきた。これは器官としての疾患(disease)の治療(curing)のみが優先され,人間の全体としての体験であり,個人的側面を含む病気(illness)に視点を置いた癒し(healing)が軽視されてきたことを意味する1)。このような医療の傾向に伴い,看護婦も検査や機械の操作に追われ,疾患中心の看護に傾き,患者の存在そのものに目を向ける余裕をなくしつつある。また一方で,医学の進歩によっても,治癒が不可能な慢性病を煩っている患者が数多く存在する。そのような患者に対しては,疾患を治せばよいという医療者の思考では限界がある。むしろ,そこでは患者が病気と共に積極的に生きることを援助する役割が医療者には必要とされている。
現象学派の精神病理学者であるvan den Berg, J. H.2)は「病気の生活は,健康な人にはおよそ想像しかねるような,完全な驚きの体験である」と述べている。さらに「病気の生活は,彼にとって現実に生きる生活のようには思われず,ただ受け身で耐えなけれはならないものである.
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