特集 経験の言語化の可能性—現象学的研究のインタビューを中心に考える
現象学的な質的研究とそこから帰結する世界
村上 靖彦
1
1大阪大学人間科学研究科
pp.542-549
発行日 2024年12月15日
Published Date 2024/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202263
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経験のリアリティを記述する
「現象学的な質的研究」という方法論がある。地味な名前なのだが,しかし〈経験のリアリティ〉を伝える方法として革命的な意味をもつ。近代の学問の前提をくつがえすのだ。
19世紀後半にほぼ現在の形になった学問は,客観性を追究する作業として成立した。とくに心理学や社会学が誕生したときに,人間の外側にある自然現象が客観的に捉えられるだけでなく,人間そのものの活動がモノとして扱われ,実験や統計で操作可能になった。それにともなって真理が,客観的に把握されたもの,数値化できるものであるとみなされるようになった。
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