特集 経験の言語化の可能性—現象学的研究のインタビューを中心に考える
現象学的な研究における経験の言語化について
家髙 洋
1,2
1東北医科薬科大学教養教育センター
2東北医科薬科大学教養教育センター哲学教室
pp.516-522
発行日 2024年12月15日
Published Date 2024/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202260
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問題の所在
現象学的な研究における「生きられた経験」とその問題
「事象そのものへ!」—これは,現象学の中で最もよく知られたスローガンだろう。私たちが日頃抱いている常識や通念,また科学的な知識や,私たちがそれぞれもっている様々な先入見(先入観)を外し,物そのもの,経験そのものへ迫って捉えようとすることが,現象学の魅力の1つになっていると考えられる。
現象学の創始者フッサールの「生活世界」という概念は,このことを典型的に示している。私たちはまず自然科学的な知見から世界を見てしまい,世界を理解しようとしている。しかし,このことが,私たち自身が生きている世界(生活世界)を隠してしまうのである。自然科学的な見方という覆いを取って,私たちが生きている世界に戻り,そこから学問を,そして私たちの生き方を立て直すというフッサールの考えには,多くの人を納得させる力があるだろう。
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