特集 質的研究と研究倫理—研究を育てる倫理の在り方再考
質的研究において保障していくべき研究倫理とは?
河原 智江
1
1共立女子大学看護学部
pp.466-471
発行日 2024年10月15日
Published Date 2024/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202249
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
いまの時代に,改めて,「質的研究と研究倫理」について考えるということは,どのような意味があるのだろうか?
「研究倫理」が問われて久しいが,一定のサイクルで,学会誌等で議論がされているという状況がある。本来,「研究倫理」とは改めていわれるまでもなく,“あたり前”に,研究に取り組んでいる誰もが“通常に”身に着け,振舞うことができるということが前提なのだろうが,“あたり前のこと”であるからこそ,常に言及し続けるべきであるといえる。
現代社会においては,ひとを取り巻くさまざまな状況や世の中の価値観が,凄まじいスピードで進んでおり,“あたり前のこと”が“あたり前”ではなく,それどころか,これまでの考え方や枠組みが全く通用せず,一瞬,一瞬で,物事がガラリと変わってしまうということが起きているようにも思われる。そのため,“あたり前”であるはずの「研究倫理」を問い続けるとともに,世の中の動き(社会の動き)を睨みつつ,問われているであろう問題(課題)に対して,どのように向き合い,対応していくのかということを議論していく必要がある。
そこで,本稿では,現代社会,あるいは,将来に向けた,質的研究における研究倫理に関する論点を考えてみたいと思う。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.