特集 質的研究活動を促進するための資源QUARIN-J(Qualitative Research Implementation Network of Nursing-Japan)
査読の経験
データは古くなっても,問いは古くならない
木下 康仁
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.360-361
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202225
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このタイトルは正確には,データも古くならないとすべきなのだが,データは問いに順ずるのでとりあえずこのようにしておく。論文を完成させ研究が終われば,データも問いも用を果たしたことになるのだろうか。通常はそういう見方になろう。データは二次分析の場合もあるが実際にはそれほど多くはないし,次の研究では問いは新たに設定されるかもしれない。
対人援助領域での質的研究論文の査読をしていて感じるのは,解釈の薄さである。目的を設定し問いを立てデータを収集,分析し結果を出すという形にはなっていても,読んでいて「人間」が浮かんでこない。印象に残らない。部分的な内容からこちらが統合的に全体を理解しなくてはならず,読み手にそこまでの負担をかけるというのは分析が完了していないからである。「方法は問いに勝るのか」「問いは方法に勝るのか」……研究では両者は一体とされるのだが,こうして分けて問うと自分の立場のあいまいさに気づきやすい。ここには数量的研究と質的研究の違いが反映してくる。
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