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学部・大学院修士課程におけるEBPとの出会い
1980年代に提唱されたEvidence Based Medicine(以下EBM)が世界に広まり,その後にEvidence-based Practice(以下EBP)へつながっていることは,これまでの本特集の他稿にあるとおりである。私が大阪大学医学部保健学科看護学専攻で勉強していた2000年代の段階では,講義の中にEBMの概念が取り込まれており,説明を受けた記憶がある。看護学生として臨地実習を行なった際も,患者のアセスメントや看護計画の立案のために,教員や病院の指導者から「Evidenceは何か」という質問を何度もいただいた。しかし,Evidenceとは具体的には何を指すのか,Evidenceを探すためにはどうしたらよいのか,という点についてはよく理解できないまま,その場しのぎの対応ばかりしていた。また,生意気にも,逆に「Evidenceはどうやって見つけたらいいですか」と教員に問うても「自分で探しなさい」と指導を受け,どうすればよいのかわからないまま,とうとう卒業してしまった。Evidenceだけでもこの調子であったので,EBPについては特に聞いた覚えもない。
学部生にとっては教科書,もしくは図書館にある参考図書が重要な情報源であり,実習のために論文検索をしていた人は周りにはいなかったと思う。そのような時間的余裕も,現在の看護学の臨地実習のタイムスケジュールにはないという場合がほとんどだろう。出版バイアスを鑑みれば,教科書などの成書となっているものには一定以上の質が担保されているとみなされており,看護実践のEvidenceを見つけるための最良の手段と考えられている。しかし,看護学の多くの教科書では,「これがEvidenceだ」という書き方はされていない。ちなみに,看護研究に関する授業では論文検索の方法や重要性について講義は受けていたはずである。まさにEBPが発揮されない状況であったということだろう。
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