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はじめに
この報告ガイドライン特集は,前号(53巻1号)と本号の2号連続となっています。報告ガイドラインとは,明確な方法論を使用して開発され,ある特定の研究を報告するときに著者の手引きとなるチェックリストやフローダイアグラム,または構造化されたテキストであるとされています(EQUARTOR Network:https://www.equator-network.org/toolkits/developing-a-reporting-guideline/)。前号では,研究成果を発表する際に,報告ガイドラインが重要とされるようになった歴史的な経緯(中山,2020),報告ガイドラインを検索できるEQUATOR Network(https://www.equator-network.org/)の紹介や報告ガイドラインを使用するときの注意点(友滝,2020),そして具体的な活用場面について紹介しました(宮下,2020)。これまで,保健・医療分野の研究においては研究報告の質の低さが指摘されてきましたが(Jüni, Altman, & Egger, 2001;Pocock et al., 2004;Tooth, Ware, Bain, Purdie, & Dobson, 2005;Chan, & Altman, 2005),看護学分野の研究も改善の余地があることが報告されています(Adams et al., 2018;Guo, Sward, Beck, & Staggers, 2014)。昨今,学術誌では論文の投稿規定において報告ガイドラインに則った執筆が求められるようになりました。この流れを受け,看護学系の学術雑誌,例えばthe International Journal of Nursing Studiesやthe Journal of Advanced Nursingでも同様の動きがみられます。
有名な報告ガイドラインとしては,前号でも取り上げたCONSORTやSTROBE,PRISMA,COREQなどがありますが,EQUATOR NetworkのHPをみると,報告ガイドラインは422もあります(2020年2月24日時点)。前号では,上記の4つのガイドラインにRECORDとCOSMINを加えて「ぜひ知っておきたいガイドライン」として位置づけ,チェックリストとともに紹介しましたが,実際にはほかにも,看護学研究者が研究成果を発表する上で有用な報告ガイドラインが多数存在します。
そこで本号では,こうした数ある報告ガイドラインの中から,研究分野を問わず共通する研究デザインをベースとした報告ガイドラインに加え,看護学研究者の関心が高いであろう心理・社会学的な側面を扱った報告ガイドラインを概観し,特に知っておくと有益と思われる報告ガイドラインを厳選して紹介します。
報告ガイドラインを活用するにあたっては,自分が行なった研究に合う報告ガイドラインを見つけなければなりません。EQUATOR Networkのデータベースは,そのための最適なツールです。ただし,EQUATOR Networkに掲載されている情報が自分の考える検索用語と一致するとは限らないので,検索がうまくいかない場合もあるかもしれません。といって,膨大な報告ガイドラインを1つひとつ精査することも現実的ではありません。本特集ではその点も考慮し,多くの研究者の協力を得ながら,看護学研究者が活用可能で,かつさまざまな研究に活きると思われる報告ガイドラインを選択しました。本特集が報告ガイドライン探索の一助となり,研究論文の質向上を果たしうるツールとなればと思っています。
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