特集 ケアの意味を見つめる事例研究─現場発看護学の構築に向けて
「ケアの意味を見つめる事例研究」のプロセス
実践の文章化
4.論文化の過程と研究の場づくり
野口 麻衣子
1
,
吉田 滋子
1
,
池田 真理
2
1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻
2東京女子医科大学看護学部
pp.431-437
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201543
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はじめに
前章までは,事例研究の主たる結果(「大見出し」「小見出し」などが整理された「表」)が出来上がった段階について述べた。従来の研究プロセスでいえば,データ収集・分析に該当する。「ケアの意味を見つめる事例研究」(以下,本事例研究)では,実践の「意識化・言語化・概念化」のプロセスである。
次に,「文章化」という新たなステップに進む。具体的には,事例を論文化するプロセスである。文章化(論文化)においては,「結果」の記述が中心となり,「緒言」「方法」「考察」なども重要である。本章では,私たちの取り組みの中でこれまで論文化に至った事例研究を振り返り,①論文を書き上げるプロセスと,②看護職(実践者)と看護職(研究者)とが円滑に協働できる場づくりのポイントを中心に述べていく。
私たちは実践者と研究者を二元論的に捉えているわけではない。主たる活動が患者(利用者)へのケア提供である看護職(以下,実践者)と,主たる活動が研究である看護職(以下,研究者)は,時に主たる活動が変化することで行き来することもあり,むしろそれが望ましいと考えている。本来は明確に分かれていないが,本章ではわかりやすく伝えるため,あえて実践者と研究者として分けて,説明を進めていくことをご理解いただきたい。
なお,私たちが取り組む事例研究は,「現場発」という点を強く意識している。実践者と研究者どちらもが主役の形でともに論文執筆に取り組むので,通常みられるような,研究者が執筆する事例研究とは異なる。この点を,まずは強調しておきたい。
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