増刊号特集 1 看護学の知をどう構築するか
多領域の視点から
経験の流れを内側から捉える知─現象学と他の方法はいかにして補い合うのか
村上 靖彦
1
1大阪大学人間科学研究科
pp.325-329
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201395
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数量化しにくい看護実践の生々しい姿を捉えることが現象学的な質的研究の目的であるとして,そこで捉えられるのはどのような事象なのか,とりわけ他の方法論と比べたときに何が違うのだろうか。答えは非常にシンプルなものであろう。多くの研究方法は,多くの事象に共通する一般概念の中に固定する。これに対して,現象学は刻一刻と展開する個々の事象をその流れの中で捕まえようとする。流れを捉えることで,支援者それぞれの実践や患者1人ひとりの経験の生きられたままの意味を捕まえようとするのだ。
そして今回,もうひとつ主張したいことがある。それは(特に統計的な処理をする)研究と現象学的な研究とは,異なる角度から事象を眺めるが決して対立するものではないということである。問題は具体的にはどのように,なぜそうなるのかである。それを以下では議論していきたい。
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