特集 研究の意味─多領域との対話から
研究の意味─社会的価値,学術的意義,個人的意味
八田 太一
1
1京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門
pp.541-546
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201313
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諸言
今回「研究の意味」という遠大なテーマを頂いた。このテーマには3つの側面があると考えている。その研究が社会や時代の要請に応えること,その研究が学術コミュニティに貢献すること,そして,研究という営みが研究者個人に与えるもの。私は現在,iPS細胞研究に関連する複雑な法的・社会的・倫理的な研究課題に取り組む中で,社会的価値と学術的意義の不一致を感じることもある。最近は,研究を進めるにあたって,この手の不一致をある程度は抱えていられるようになった。おそらくは,研究の意味という概念の複雑度が変わってきたのだと思われる。残念ながら,それがどのような変化であったのかを明確に語る言葉を持ち合わせてはいない。私自身,研究を通して出会った先人たちや仲間に導かれるようにその道を歩んできたためだ。本稿では,これまでの自身の研究を振り返り,私なりの現時点での「研究の意味」について思うところを綴ってみることにする。
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