特集 新しい高齢者観と保健婦活動
老いの社会文化的意味の創出
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.432-437
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901582
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はじめに
以前,保健婦の方たちと在宅高齢者の事例研究をしていたことがあるのだが,あるとき,なるほどこれが保健婦的発想なのかと改めて気づかされたことがある。事例研究では対象者の心身状態や生活状態を把握し,ニーズを見極め,必要な援助を考えていくのだが,こうした作業はその対象者にとっての「問題は一体何か?」という問いをその都度立て,それに対して作業仮説的答えを考えながら進められていた。
噛み合わないという印象は,問題をどう捉えるかに関してのズレから来たと記憶している。ここでいう問題とは,障害であるとか健康問題のことではない。むろん,事例研究に取り上げられるわけだからそうした問題があるのは言うまでもないのだが,その人を独自の生活歴をもつひとりの人として理解しようとすると,対象者1人ひとりについて「問題は一体何か?」を考えなくてはならない。その上で,あるいは,それに照らして最初にニーズと考えられたものが本当に援助的対応を必要とするものかどうか,また,どの程度の援助が適切であるかを検討できるのである。
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