研究
在宅呆け老人の異常精神症状の関連要因と家族への看護支援に関する研究
野川 とも江
1
,
高崎 絹子
1
,
安田 美弥子
1
,
佐々木 明子
1
,
内田 英子
1
,
伊藤 景一
2
,
河内 卓
3
1埼玉県立衛生短期大学
2東京女子医科大学看護短期大学
3埼玉県熊谷保健所
pp.269-282
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200975
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はじめに
在宅呆け老人・家族を支援するための地域ケア体制を確立することは,緊急課題として注目されている。地域ケアを考えるに当たっては,呆け老人や家族の特有の問題に視点を向けることが重要であり,その実態もいくつか報告されている1-6)。従来は呆け老人の知能低下に焦点が当てられていたが,近年は,それによって引き起こされる精神症状や問題行動と生活の支障に,より焦点がおかれるようになった。このことは,医学的管理そのものより,呆け老人をとりまく家族への看護支援が地域ケアの基本であることを示している。
筆者らは,こうした観点から調査を実施し,在宅呆け老人・家族支援の特質を明らかにするために,既に多面的に分析し,報告している7-13)。現状では,家族は地域社会から孤立し,社会的な対応の遅れも相まって,精神的・身体的負担は極めて大きい。特に家族にとって最も介護上の困難をきたすと指摘されている被害的な言動や不穏な状態などの異常な精神症状や行動については,在宅に限られた問題ではなく,施設処遇においても同様で,受け入れに支障をきたしており,在宅で介護せざるをえないのが実態である。
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