焦点 事例研究と看護における予測性
解説
失敗事例から学ぶ意義
川島 みどり
1
1東京看護学セミナー
pp.251-255
発行日 1980年10月15日
Published Date 1980/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200623
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はじめに
医学の領域では誤診ということはしばしば問題となる。急性期の誤診は死につながることもある。慢性疾患であれば,患者の一生の問題にかかわってくる。医師の診断能力を高めるためにも,医学全体の水準を上げるためにも,病理解剖やC. P. C.が定着している。看護の場合はどうであろうか。"誤看護"といった言葉はまだあまり使われていないようである。
だが,現実には,"悔いを残した体験"や"予期しない急変""あってはならない事故"などの事例は無数に存在している。しかし実際に公開され報告される看護事例のほとんどは,"うまく行った例""無事退院にこぎつけた例"が多い。もとより,困難な条件の中でチームをあげて取り組んだ患者の,健康回復や障害の克服,苦痛の軽減に至るプロセスを振り返る意味の大切さはいうまでもないことである。むしろ,量的にも質的にももっと広く深く,一例ごとの検討を積み重ねる必要がある。そしてその成果を共有すべきである。問題は成果の蔭にそれ以上にある失敗例,うまく行かなかった例についての検討をどうするかということである。
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