焦点 事例研究と看護記録
座談会
的確な問題意識に基づいた日常の記録を大切に
登坂 有子
1
,
北尾 玲子
2
,
宮崎 和子
3
1虎の門病院
2津久井保健所
3千葉大学教育学部
pp.179-194
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200616
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宮崎 きょうは「事例研究と記録」ということでお話し合いしたいと思います。本誌の1979年第1号の特集「科学的な記録への挑戦」では,他領域の先生方から科学的な記録についての示唆などがあり,このあたりから事例研究と科学研究という問題などが出てきているような気がいたします。また,本誌シリーズ「事例研究」の中で,いろんな方の事例研究についてのご発言の中に,記録にふれた部分がたくさんあり,現在の記録が非常に不備であるという観点からの指摘があったと思います。昨年の第2号の氏家先生の論文では,現在,看護研究の中で特に事例研究の占める量がだんだん多くなっているということを報告なさっています。しかし,経験したので報告する式のものが多く,経験内容のどの点で新しく,特異的で,一般化できるかという理由づけが十分でないとか,目的,考察の一貫性がないなど,研究としてはいろいろな問題点があるんだということをお書きになっています。
看護でこんなに事例研究がなされているならば,もうそろそろ事例研究が研究として役に立つのか立たないのか,あるいは事例研究を厳密な意味の科学とすることが可能なのか,可能ならばどのようなあり方が必要なのか,きちっと考える時期ではないかと思います。
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