焦点 事例研究と看護記録
レポート
事例研究と記録について
金子 保
1
1淑徳大学社会福祉学部
pp.174-178
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200615
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1.事例研究
事例研究が何かを理解するためには,事例とは何かについて考えておかなければならない。まず言えそうなことは,気のついたことをむやみに並べたてても事例とはならないことであろう。たとえ,その患者の48時間をビデオに採録しても,事例研究になるわけではない。それだけで事例とは言えない。それが事例であるためには,そこにひとつのストーリイが必要と思われる。そのストーリイは臨床看護や臨床心理の状況の場合,それは一般にコメディーとは思われない。研究心の旺盛な萩本欽一氏にも事例研究があるとすれば,それはコメディーであろうと思う。しかし,私たちのそれはコメディーではない。それは普通,辛いストーリイであり,苦しいストーリイである。ときにはきわめてシリアスなストーリイとなるかもしれない。そうしたストーリイが事例を構成する。
しかし,いくら辛苦が深くとも,それだけで事例となるのではない。その患者氏の辛苦を思い,何とかしたいと思う看護者がいて,そのひとりの看護者が,どうにも我慢のならない心情を持つとき,そのときはじめて事例は生まれ出てくることになると思われる。
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