焦点 患者の精神生活にどこまでかかわるか・5
レポート・4
その人らしさを支えるということ—訪問看護の中から
新津 ふみ子
1
1新宿区民健康センター
pp.412-414
発行日 1977年10月15日
Published Date 1977/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200534
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訪問看護を仕事としてから2年半になる。この間に私個人は,8人の死に出合っている。一人一人が過ごしてきた人生の結びは,真に,"その人らしかった"のではないかとも思える。家庭でみとられた人は家族との関係の中でのみとりがうかがわれ,病院で死をむかえた人もまた何かその人らしさを残している。
しかし,死にいった人達への看護を想起する時,その人らしい結びではなかったか,と語るには,まだかなりの戸惑いがあり,否定すら生じてくる。またその人らしい,といういい方は,死にゆくさまはその人のみに原因があるのだとし,看護者のかかわり方が本質的?には影響していないのだ,との逃げ口上があり,看護そのものの合理化ともうかがわれる。そしてまたその人らしい,とはだれが決めたのか,との思惑もあり,このように語る事は無理であり,誤解を生ずる事になるかもしれない。しかしあえてその人らしさ,と語り,その事がとても気になり出したのは,訪問看護を始めてからであり,それも最近心から離れなくなったからである。そこには,その人らしさを,与えてはこなかった自分の看護へのふり返りがあり,もしかして看護はその人らしさを与える一つの仕事ではないかと思っているからであろう。
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