ホームケア・12(最終回) 新宿区立区民健康センター訪問看護婦のリレー随筆
訪問看護のひろがりの中で
新津 ふみ子
pp.1400
発行日 1982年12月1日
Published Date 1982/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919736
- 有料閲覧
- 文献概要
新宿区には独り暮らしの老人が多い.94歳の通称‘ネコばあさん’は,昔20匹もいた猫が2匹に減った秋の朝,1人で旅立っていった.葬式に集まった町内会の人たちは,長生きの見本だとその強さをほめ上げた.
終末期は本当に厳しかった.まったく寝たきりになり,自分でできることは何ひとつない.お尻についた便もそのまま,尿でぬれたオムツも替えられない.哺乳瓶に好きなジュースを入れて枕元に置いても,1人ではもう飲めない.褥創もできてきた.入院を勧め,このまま家に居たいのかと,何度も問いかけた.ネコばあさんは,寿命はお天道様が決める.患者の気ままにしてあげることが病気にはいちばんいい.‘ここに居る’としか語らない.人として当たり前の気持ちであり,これがこの人の生きざまだと思う.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.